THEORYThe Results of Academic Report of Yoshika

2021.05.26

ストライカー育成についての研究 ~序章~

日本サッカー協会(以下、JFA)は、「JFAの目標2030」として、「JFA2005年宣言」で掲げた
「JFAの約束2050(2050年までにW杯自国開催・自国優勝)」を達成させるために、
「JFAの目標2030(2030年までに日本がW杯ベスト4に入る)」を設定した。
これを実現させることが、私の人生の夢・目標である。

今から約7年前、現役引退後に立上げたサッカースクールは複数チームを持つまでに拡大し、経営は順調に推移していたところ、2014年に不覚にも1つのチームを失い、翌年にはGMとして携わっていたチームから志半ばで離れるなど苦難が続いた。

自分に足りないものは何か。自問自答を繰り返し、選んだ道は日本サッカー界に多くの人材を輩出している筑波大学大学院への入学だった。「力をつけて、一から出直したい」と考えていたところに、同大学OBである知人から紹介を受け「ここならしっかり勉強できる」と2015年夏に一般入試で受験し合格。研究者の道に足を踏み入れることになった。

ヨーロッパの監督や指導者は勉強家が多く、オリバー・カーンはMBA(経営学の修士号)を取得し、オリバー・ビアホフも大学で経営を学んだという。今年2021年のチャンピオンズリーグを制したチェルシーのトーマス・トゥヘル監督も、24歳の引退直後からバーでアルバイトをしながら大学に通い、指導者の資格を取得している。そんな彼らの能力が、クラブやチームの強化に貢献していることは明らかである。
今後の日本サッカーの強化、発展のためには、プロサッカー選手経験者が組織や現場で活躍しなければならない、アトランタ五輪で日の丸を背負った我々が、そのような存在の先駆けになっていかなければならない、という使命感があった。

筑波大学院では歴史学、経営学、社会学、生物学……様々な分野の授業を通じ、スポーツを多角的に捉え知見を深めていく。社会人としてそれぞれの場所で活躍する同級生と協力しながら夜遅くまで課題に取組み、授業で発表するという初めてのキャンパスライフ。忙しくも、知識を習得することにやりがいを感じ、刺激的だった。

 

大学院を卒業するには修士論文の発表が義務付けられており、指導教員の高橋義雄准教授と相談のうえ、「ストライカー育成論」をテーマに選んだ。私自身がフォワードの選手であったこと、プロサッカー選手として12年間で日本や南米、欧州のクラブなど12クラブでプレーし、語学が堪能なこと、各国にたくさんコネクションを持っており、南米を中心にカバーニなどトップレベルのストライカーや指導者から直接話を聞けることが、決め手だった。また当時、過去のW杯の結果を調べてみると南米のストライカーに優位性があるデータも出てきたので研究テーマとしての意義もあった。
日本サッカー界が優秀なストライカーを輩出するために必要なものを、南米出身のストライカーや指導者へのインタビューを通じて明らかにする研究を2年間かけて取り組んだ。
その研究の成果をまとめたのが、2018年に発表した「サッカーのストライカー育成における日本と南米の比較研究」である。
次回から、この研究論文をこの場で披露していく。