THEORYThe Results of Academic Report of Yoshika

2022.06.03

指導者インタビュー マリオ・レボーショ③

下線部・・・マリオがストライカーに重要な要素にについて言及している箇所

 

松原 ここ数年マリオコーチはウルグアイ代表を観察しているわけですが、U-20も観察しているということでしょうか。

マリオ M14タバレス監督は、ウルグアイ代表のピラミッドの頂点に立つ人物です。ですから、U-20にも関係してきます。タバレス監督が全ての下部代表の監督を決めます。総監督です。コーチ等に関しては我々が構成する権限があり、そのため下部代表のコーチ等は、コーチである我々が形成します。また我々コーチ一同は、ウルグアイ代表がオフの場合には、下部代表の全ての練習に参加します。1年間のシーズンでは、M15 U-20、U-15、U-17が定期的に練習を行います。それが月曜日、火曜日、水曜日です。そして木曜日には、各選手が所属するクラブへ戻るわけです。先ほどもいいましたように、M16我々コーチ一同は月曜日、火曜日、水曜日の練習に選手を観察するために参加をするわけです。

松原 練習に参加するということは指導もするのですか?

マリオ 下部代表のU-20、U-15、U-17の練習参加においては、指導をしないようにしています。できるだけ自由を与え、練習中もグランドに入らないようにしてコーチと監督に任せています。練習が終わった後には選手と話をすることもありますし、コーチに助言をすることもあれば、タバレス監督が自らユース代表を仕切っている監督に指示を伝えることもあります。それに試合前にも情報交換もしています。ですから月曜日、火曜日、水曜日に関しては常に各ユース代表のコーチと監督との疎通を保っています。実をいうと、私は現役時代にU-15の指導者とプレーをしていた時代もあります。同様にU-15のアシスタントやU-20の指導者も同じです。このようにみてみると、M17以前から付き合いがある指導者や監督がユース代表を指揮しているのです。

それ故に素晴らしい信頼関係が築かれているのです。

松原 このような仕組みはどのように学ばれたのですか?

マリオ 相手への尊重にあると考えます。タバレス監督は、一定の暗黙のルールを示しているのではないかと。各指導者と各監督に自由を与えることによって、本人達にも成長の可能性を見込んでいるのです。M18思ったように指導をさせ、失敗をして学び、成長をして欲しいのです。正しいことではないと我々が気づけば、助言もします。そうではければタバレス監督の指示のままになり、それでは成長がないのです。

松原 マリオコーチから観て、ストライカーに絶対的に必要な条件とはなんですか?

マリオ 私が考えるにそれぞれ異なる特性が存在すると思います。例えばカバーニ選手についていうと確たるストライカーで、スアレス選手に関しても同様のストライカーです。ですから、異なる特性を持っているのです。例えばカバーニ選手は一対一が不得意ですが、左でも右でも準備をして待ち構えています。スアレス選手の場合はプレーを生成します。一人でプレーを生成することができるのです、しかしカバーニ選手はそうではありません。

松原 カバーニ選手とスアレス選手はなぜそうなって行ったと思いますか。

マリオ M19とても賢いからです。

カバーニ選手は以前から爆発的なフィジカルで優れていました。ユース時代からフィジカルが優れていたのです。

スアレス選手の場合は、ヨーロッパに移籍してから徐々に自らフィジカルを向上させたのです。

松原 ですが、代表チームを指導していてクラブチームではありませんね?その時に彼らが成長するために、どういった指導を心がけたのですか?

マリオ スアレス選手の場合は、物理的なフィジカル能力が発達していませんでした。なぜなら、シュミレーションしていなかったのです。例えば減量問題です。スアレス選手がヨーロッパで気がついたことは、減量に気を配ることでさらにポテンシャルの向上が生まれ、良いパフォーマンスになることです。元々スアレス選手は、しっかりと練習に取り組む選手でした。ですが減量に関しては、ウルグアイ代表のトップでプレーをするためのフィジカルを持ち合わせていなかったのです。ところが減量に力を入れ始め、自身をプロフェッショナルとして形成させる手段を取得したのです。ヨーロッパで学びました。今のスアレス選手は、M20プロのサッカー選手が注意を払わなければならない全てに気を配ります。練習にも減量にも気配りをしていると断言できます。ところがカバーニ選手の場合は異なります。前述のようにカバーニ選手は19歳にしてフィジカル能力が優れていたのです。スアレス選手は段階を踏んでフィジカルを強化していったのです。フローニンゲンに始まり、アヤックス、リバプール、そしてバルセロナ。M21フィジカルを強化して行く過程で、彼が所属するチームの重要選手になっていき、そこでM22自分が重要なプレーヤーであることも認識し始めたのです。何よりもフィジカル能力を向上させたのが、オランダに所属していた頃だと考えます。アヤックスでは3年間プレーをし、キャプテンとなりました。リバプールに移籍したときには完成形だったと思います。

 

2017年 W杯南米予選 vsアルゼンチン戦でのスアレス

 

松原 ではスアレス選手がオランダに移籍をしていなかったら、現在のような選手ではないということですか?

マリオ オランダ以外のリーグに移籍をしていたら、同様の選手になっていたのかもしれません。ですが、フィジカルの強化は彼の決断によるものです。または、移籍先のクラブから「スアレス貴方は食事に注意を払いなさい」と要求があったかもしれませんね。今、多くのクラブが選手に減量等を要求する時代ですからね。

しかし決断をしたのはスアレス選手本人なのです。もしM23彼が食事に対する注意を払わなければ、今のスアレス選手は存在していないはずです。それが現実だと思います。ところが今のスアレス選手はそれを克服し、その重要性を理解しているのです。体のケアのために気配りをしています。ミネラルウォーターのペットボトルを彼の手にみることができるのは、その証拠です。

松原 スアレス選手とカバーニ選手の何がいいと思われますか?

マリオ 同じストライカーではあるが、異なるタイプのストライカーです。前述でもいいましたが、違いがあるとすればゴールを奪うまでの過程の違いです。2010年のワールドカップでも、カバーニ選手は代表でトップ下としてプレイもしたことがあります。当時はフォワードにフォルランとルイスもいました。カバーニ選手はその可能性も秘めていたのです。彼はストライカーとしての技能とは別に、トップ下としての能力も発揮しました。当時の代表は、コンディションのいい選手を起用しなければならない苦労もあり、カバーニ選手はトップ下としての役割を果たしたのです。ワールドカップやコパ・アメリカでも、そのポジションでカバーニ選手はゴールを奪っていました。しかし彼の本来のポジションはフォワードですから、本人はとても努力をしたと思います。スアレス選手の場合は予期しないところでゴールを奪う能力にあると思います。スアレス選手はM24常に勝利をしたい気持ちに満ち溢れています。これが彼のストライカーとしての原動力の源になっているのです。このような要素で今の彼が生み出される結果となりました。一言で言えばM3とても負けず嫌いです。練習においても同じことが言えます。どの選手も負けたくない気持ちを持っていますが、M24スアレス選手が持っている気持ちは他の選手よりも強いのです。ここまで二人の選手に注目して話をしてきましたが、二人を照らし合わせて、ストライカーに絶対的に必要な要素をまとめますと、必要な要素はテクニカル技能です。両選手は右足、または左足、ときにはヘディングでゴールを奪うことができます。M26フィジカル技能においても、両選手が共通する点はとてもポテンシャルがある点です。前述のようにカバーニ選手は一対一がさほど得意ではありません。スアレス選手は前線のエリア内のサイドでも、プレイに長けているのです。カバーニ選手が不得意とするプレイはスアレス選手にあり、逆にスアレス選手が不得意とするプレイをカバーニ選手が持っているのです。

松原 二人にマリオコーチは指導者としてこうやって動けと伝えているのか、それとも任せているのですか?

マリオ M27導者として指示するというよりも情報を与えます。両選手は代表で培ってきた経験や、日頃からヨーロッパの選手と所属のリーグ戦、またはヨーロッパで行われるクラブチームの大会で他の選手と対戦もしていますからね。私は指示というよりも対戦相手のチームの情報を与えます。彼らが利点を得るのに、対戦相手のディフェンスの不得意な点や諸々の情報がそれに該当します。これはフォワードの選手に限らず、ディフェンダーの選手にも該当することです。どのように働くかは、戦っている本人達が一番理解しているはずです。