THEORYThe Results of Academic Report of Yoshika

2021.05.27

FW育成に関する日本と南米の比較研究 背景②

現在(2017年当時)、少しずつヨーロッパリーグでプレーする日本人フォワード(以下、FW)は増えている。2016~2017シーズンのゴール数を見ると、イングランドプレミアリーグのレスターでプレーする(当時)岡崎慎司は30試合に出場し3得点、ドイツブンデスリーガのケルンでプレーする(当時)大迫勇也は30試合に出場し7得点しか挙げていない。

一方、(当時の)岡崎と同じイングランドプレミアリーグでプレーするイングランド代表FWハリー・ケイン(トッテナム)は30試合に出場し29得点、(当時の)大迫と同じドイツブンデスリーガでプレーする、ガボン代表FWオーバメヤン(ドルトムント)は32試合に出場し31得点挙げている。

このように日本人のゴールを奪える選手が不足しているにも関わらず、JFAがこうしたゴールを奪える選手の育成をめざした取り組みは、指導書を閲覧してみても、今後の課題点として挙げてはいるが、具体的な技術の指導法や、選手の育成方法についての言及はない。

日本代表FW杉本健勇(当時セレッソ大阪)は、インタビューの中で「自分には点を取ることだけじゃなくて,それ以外にもやるべきことはたくさんある。」(月刊サッカーマガジン、2017)と述べているが、このことはFWが点を取ること以外のプレーをしていることを示している。さらに、元日本代表FW釜本邦茂は、近年の日本人FWの特徴として、「どうしてもパスを考えてしまっている。」(MSNニュース,2017)ことを挙げ、ザッケローニ元日本代表監督は、日本の選手がゴールを決めきれないのは、「技術の問題ではなく、習慣のようなもの」(国際ニュース、2012)と述べている。これらの証言は、日本のFWがゴールを取ることをあまり重視していないのではないかと考えさせられる。

一方、世界のFWは、「世界はほんの少しの判断ミスやコントロールミスを見逃さず、的確についてくる.そしてチャンスを確実に仕留めて風穴を広げていく。」(JFA,2016)とされる。そして、得点王がいるチームは世界の大会やリーグにおいて好成績を残す。

近年(2017年当時)の欧州5大リーグの得点ランキングを概観すると、メッシ、イグアイン(アルゼンチン)、スアレス、カバーニ(ウルグアイ)など南米選手がその大勢を占めている。南米選手はなぜ「得点を奪えるFW」として活躍できるのか。

南米での「得点を奪えるFW」を取り巻く環境、育成方法、選手個々のパーソナリティーなどを研究することで、得点を奪えるFWが育成される要因を仮説構築的に明らかにすることができる可能性がある。

 

 

そこで本研究では、ヨーロッパ5大リーグ(イングランドプレミアリーグ、スペインリーガエスパニョーラ、フランスリーグ・アン、ドイツブンデスリーガ、イタリアセリエA)において、過去5年間(2012-13シーズンから2016-17シーズン)、得点ランキングベスト5にランクインしたことのある南米出身選手を「ストライカー」と定義する。

そして欧州5大リーグで活躍する優秀なストライカーに求められる要素を、欧州5大リーグで活躍したFWの選手や輩出した指導者へインタビューすることで、「ストライカー」を取り巻く環境、育成方法、選手個々のパーソナリティーなどを明らかにする。

本研究の結果は、日本サッカー界へ還元することで、日本代表が世界と対等に戦っていくための一助になると考えられる。